インボイス制度の仕入税額控除の経過措置とは?期間や適用要件を解説
インボイス制度では、消費税の処理方法について従来のルールからさまざまな変更が生じています。その中で最もインパクトが大きいのが、免税事業者からの仕入れが仕入税額控除の対象外になったことです。
ただし、経過措置が設けられているため、いきなり全額が控除の対象外になるわけではありません。この記事では、仕入税額控除の経過措置の内容や、具体的な処理方法について解説します。
弥生のクラウドソフトならインボイス制度の対応もかんたん、あんしん
無料お役立ち資料【インボイス制度まるわかり資料セット】をダウンロードする
インボイス制度では、免税事業者に支払った消費税に対する仕入税額控除は原則的に認められません(買手側が簡易課税制度を選択している場合を除く)。
また、経過措置が設けられているため、インボイス制度の開始と同時に全額が仕入税額控除できなくなるわけではありません。経過措置の期間中は、免税事業者からの仕入についても一定割合を控除することが可能です。
なお、インボイス制度には、仕入税額控除の経過措置のほかにも、免税事業者が課税事業者になった場合に、課税売上で受け取った消費税の2割を納税する「2割特例」や、条件を満たすことで1万円以下のインボイスの発行と保存が不要になる制度など、さまざまな経過措置が設けられています。
これらの経過措置は、インボイス制度によって大きな影響を受けると考えられる事業者の負担を減らすために設けられるもの。インボイス制度により、免税事業者、課税事業者それぞれに影響が生じる事柄は、下記のとおりです。
こうした負担を軽減するために、免税事業者や課税事業者に対する経過措置が設けられています。正しく制度を理解し、準備する必要があるでしょう。
弥生のクラウドソフトならインボイス制度の対応もかんたん、あんしん
仕入税額控除に関する経過措置の期間は、インボイス制度がスタートしてから6年間です。ただし、税額控除できる割合は、3年経過後に減少します。
仕入税額控除の制度について理解を深めるために、まずは従来の消費税納付の流れを解説します。インボイス制度によりどのように変更になったのかを確認しましょう。
例として、消費税の課税事業者が、4,000円で仕入れた商品を、消費者に1万円で売ったとします。消費税率が10%の場合、消費税額は下記のとおりです。
この課税事業者は、消費者から受け取った1,000円の消費税から、仕入先に支払った消費税額400円を差し引き、600円を税務署に納付。また、仕入先は、受け取った消費税額400円を納付します。
このように、売手側と買手側がそれぞれ納税することで、結果的に消費者が支払った消費税額1,000円が、全額税務署に納付されるというのが消費税納税の流れです。
同じ取引内容だとしても、仕入先(売手側)が免税事業者の場合、400円は納付されずに免税事業者の利益となります。
インボイス制度開始後、売手側が適格請求書(インボイス)発行事業者で、適格請求書が交付・買手側で受領・保存されていれば、納税額や処理方法は従来とそれほど変わりません。
その一方で、仕入先(売手側)が免税事業者であったり、適格請求書の交付がなかったりする場合、買手側は仕入税額控除ができないため、消費者から受け取った消費税1,000円を全額、税務署に納めることになります(買手側が簡易課税を選択していない場合)。
ただし、経過措置の期間中は、たとえ売手側が免税事業者でも下記の控除が可能です。
つまり、上記の事業者は、2023年10月1日から2026年9月30日までの取引であれば「1,000円-320円=680円」、2026年10月1日から2029年9月30日までの取引であれば「1,000円-200円=800円」を税務署に納めることになります。
仕入税額控除の経過措置は、「免税事業者等」からの仕入があるすべての事業者が利用できます。事前の届出や申請は必要ありません。
なお、免税事業者等とは、具体的には下記の3つに該当する事業者または消費者です。
この場合、適格請求書を発行できない個人から中古品を買い取った場合でも、仕入税額控除を利用できます。買い取りの際に記入してもらうチェックシートなどで、相手が「適格請求書発行事業者でないこと」を客観的に明らかにしておくことも必要となるので注意してください。
課税事業者が経過措置の期間中に上記のいずれかと取引を行って消費税を支払った場合、支払った消費税額の一部が仕入税額控除の対象になります。
免税事業者等からの仕入について、仕入税額控除を利用したい場合は、下記の2つの要件を満たす必要があります。
仕入税額控除を利用したい場合、本来は適格請求書を交付することのできない免税事業者等から、適格請求書と同じ項目の記載事項を満たす請求書等を受け取る必要があります。記載すべき項目は下記のとおりです。
請求書は、仕入先に交付してもらう必要があります。記載項目を伝えたうえで、対応を依頼してください。
仕入税額控除を利用するためには、要件を満たした帳簿を作成する必要があります。記載すべき要件は、下記のとおりです。
弥生のクラウドソフトならインボイス制度の対応もかんたん、あんしん
インボイス制度では、経過措置期間中は免税事業者からの仕入について、消費税額の一部のみが税額控除の対象になるため、経理処理方法に注意が必要です。インボイス制度の経過措置期間中に免税事業者と取引をした場合の仕訳方法と、併せて知っておきたい税額の計算方法について解説します。
インボイス制度で、経過措置期間中に対象取引があった場合は、支払った消費税の一部のみが仕入税額控除の対象になります。このような取引が発生した際は、下記のいずれかの方法で処理してください。
個別に仕訳をする場合は、該当の取引について、本体価格と仮払消費税等の割合を調整することで対応します。
例えば、免税事業者から1万円の商品を仕入れた場合の仕訳方法は下記のとおりです。
経過措置期間中であっても、支払う金額である「11,000円」に変更はありません。ただし、税額控除の対象となるのが「80%=800円」のみであるため、仕入額に残りの20%分を上乗せして仕訳します。
期末にまとめて処理する場合は、取引をした時点ではインボイス導入前と同じ仕訳を行います。そのうえで、期末に雑損失として、経過措置の対象にならない消費税分を差し引きましょう。
例えば、免税事業者から1万円の商品を仕入れた場合の仕訳方法は下記のとおりです。
期末にまとめて処理をすれば、取引発生時の処理方法をこれまでと変える必要がありません。なお、弥生の会計製品ではこの方法に対応していません。
ただし、減価償却資産を取得した際に調整を行わなければならない可能性もあります。また、課税事業者と免税事業者の取引や、軽減税率と標準税率の取引が混在している場合などは、その都度個別に仕訳を行うのがおすすめです。
いずれにせよ、一度決めた処理方法を途中で変えるのは得策ではありません。あらかじめ事業内容に適した方法を定め、一貫した対応をとりましょう。
インボイス制度は、すべての事業者にとって影響があります。免税事業者との取引がある場合は、経過措置中の対応についても検討しなければなりません。取引先(売手側・仕入先)が免税事業者に該当するかどうかを確認しておくとともに、経過措置の適用となる取引の処理方法を検討しておきましょう。インボイス制度に対応している会計ソフトでは、多くの場合、経過措置中の仕訳についても対応可能です。ミスのない申告のために、会計ソフトの導入を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
適格請求書の発行ができる「Misoca」をはじめ、適格請求書/区分記載請求書の入力・仕訳に対応の個人事業主向けクラウド申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」、Misocaで作成した請求書や受領した請求書等の登録番号等から適格請求書/区分記載請求書を自動判定して、自動保存・管理できる「スマート証憑管理※1」など、弥生のクラウドサービスならインボイス制度にまるっと無料で対応できます。
今なら1年間無料になるキャンペーンを実施中!まずはお試しください。
クラウド請求書発行ソフトMisocaは、見積書・納品書・請求書・領収書・検収書の作成が可能です。取引先・品目・税率などをテンプレートの入力フォームに記入・選択するだけで、かんたんにキレイな帳票が作成できます。
さらに固定取引の請求書を自動作成する自動作成予約の機能や、Misocaで作成した請求データを弥生の会計ソフトで自動取込・自動仕訳を行う連携機能など、請求業務を効率化する機能が盛り沢山です。
月10枚までの請求書作成ならずっと無料!月15枚以上の請求書作成なら初年度無料になるキャンペーン実施中です。
弥生のクラウド会計ソフトは、銀行口座・クレジットカードの明細、レシートのスキャンデータを自動取込・自動仕訳するから、日々の取引入力業務がラクにできます。
また決算書類の作成も流れに沿って入力するだけ!経理初心者の方でも、”かんたん”に会計業務を行うことができます。
個人事業主の方は、「やよいの青色申告 オンライン」をご検討ください。Misocaとのセットがお得です。
今なら、すべての機能が1年間無料でご利用いただけます。
法人向けクラウド会計ソフト「弥生会計 Next」では、請求書作成ソフト・経費精算ソフト・証憑管理ソフトがセットで利用できます。自動的にデータが連携されるため、バックオフィス業務を幅広く効率化できます。もちろん、インボイスの対応も万全です。