
私は異文化間コミュニケーションを専門分野とし、なかでも日本で働く外国人との共生に興味を持って研究・教育に取り組んでいます。異文化を背景にもつ人々といかに協働していくか。それは社会全体で考えるべき課題です。
最近では入管法(出入国管理及び難民認定法)の改正など、外国人に関連する政府の動きが活発化していることが日々のニュースで伝えられています。
生活実感としても、日本で働く外国出身の方々が増加している印象があると思います。彼・彼女たちがコンビニや飲食店で働く姿は今や日常的な光景でしょう。
厚生労働省が発表している「外国人雇用状況」によると、2022年10月末現在における外国人労働者数は約182.3万人で過去最高を更新。2013年の数字が71.8万人ですから、実に10年間で2.53倍に増加したことになります。
その背景には、グローバル化の進展に加えて、少子高齢化にともなう労働人口の減少から、労働力の担い手としての在留外国人を増やしたいという日本政府の方針があります。
日本は長らく外国へ人を送り出す出移民(emigrant)の国でしたが、1980年代頃に海外から流入してくる入移民(immigrant)の国に変化しました。以降、入管法改正による在留資格の緩和や枠組みの創設、あるいは外国人留学生の受け入れ推進といった積極的方針をとっています。
たとえば2008年に政府が打ち出した「留学生30万人計画」では、学生生活を支える支援制度の整備のみならず、卒業・修了後には高度外国人材として日本で就職し、定住を促す視座を提示しました。
たしかに、これによって海外からの留学生は急増しましたが、実態としては、日本の経済界が望む安価な労働力確保の手段となっていった面は否定できません。
この留学生30万人計画のように、就労目的以外で入国させて実質的には労働者として扱うのは、正面玄関を通らないという意味において「移民のサイドドア」と呼べるでしょう。
しかし、現に外国人労働者の受け入れは増加の一途を辿っており、2023年の春から夏にかけても、高度人材受け入れの追加政策の施行や、海外在住の日系4世の在留資格に関する制度改正の方針など、様々なトピックが持ち上がりました。
なかでも注目されたのは、政府が6月、外国人の在留資格の一つである「特定技能2号」の対象分野を拡大する閣議決定を行ったことでしょう。
これによって、これまで建設と造船・舶用工業の2分野に限られていた特定技能2号が、農業や漁業などを含めた11分野まで大幅に拡大されることになりました。