海外大学進学を考えるうえで最大の難題ともいえるのが、学費をはじめとする留学にかかる費用ですよね。   しかし、昨今はさまざまな返済不要の給付型奨学金が登場しているため、それらの活用を検討している人も多いはず。   今回は、認知度の高いJASSO奨学金をはじめとする、おすすめの給付型奨学金を多角的に紹介していきます。   多くの奨学金の募集時期が7月以降なので、2025年度の詳細はこれから公表される予定ですが(2024年7月時点)、2023年度とおおむね同様の応募要件やスケジュールが適用されると想定できます。   世界に進学先が広がっていますが、やはり圧倒的に人気なのが世界最多の大学数を誇るアメリカ。   今回ピックアップした8つの奨学金は、いずれも米国大学の学費支給に対応しています。   ただ、①支給対象となる米国大学を主催者が指定しているケースと、②奨学生が入学許可を得ていればどの大学でも認められるケースのふたとおりにわけられます。   まず、支給対象大学がいっさい指定されていないのは、つぎのふたつの奨学金です。   上記であれば、かならずしも難関大学ではなくても、自身が入学可能な米国大学に係る授業料等を支援してもらえます。   対象校が指定される奨学金では、基本的に上位大学やエリート校のみが対象となるケースが多く、標準レベルの海外大学を中心に出願する場合は、このふたつの奨学金制度が有力候補となるでしょう。   家計状況の捉え方としては、JASSOでは明確な基準(2000万円以下)が設けられているのに対して、重田教育財団の場合は総合的な判断材料の1要素という位置づけです。   そのため、ほかの応募者の家計状況によっては、相対的にシビアな評価基準が適用される可能性もあります。   大学が指定されているものの、米国の50大学がすべて支援対象となるのが、設立されて2年目を迎える「エン人材教育財団」の海外進学奨学金です。   米国の上位大学がメインではありますが、50校という幅広い選択肢が用意されているため、大半の高校生にとって検討すべき奨学金といえます。ただし、奨学生の採用人数は多くありません(2~3名程度)。   続いて、現役高校生以外に、応募締切日までに高校などを卒業後3年以内の人なら応募が可能できるのが「JASSO海外留学支援制度」。   24才以下が応募できるリクルートスカラシップ・学術部門も、成績優秀な理系志望者という制限はありますが、年齢の許容範囲は広いです。   笹川平和財団も、年齢制限のない給付型の奨学金制度となっています。重田教育財団も年齢制限がなく、留学の途中からでも応募が可能。   エン人材教育財団の場合は、20才以下で大学1年次の入学を目指すのであれば応募資格を満たします。   そして、卒業から一定期間内であれば応募できる「グルー・バンクロフト基金奨学金」は、米国のリベラルアーツカレッジのみを対象にした制度。   この制度は、応募時点で4パターンの支援方法を選ぶ必要があります。   対象校のレベルは標準~難関まで幅広い印象で、採用人数は多くありませんが、学力上位者に限らず選抜される可能性のある制度ではないでしょうか。   以下にあげる4つの奨学金制度は、世界トップ50~トップ10に入るような米国有数の名門大学をメインに対象校に定めています。   「柳井正財団」と「笹川平和財団」は、米国の総合大学(University)以外に、リベラルアーツカレッジ(柳井/20校、笹川/12校)も支給対象に含みます。   東進(株式会社ナガセ)の奨学金は、「全国統一高校生テスト 」の成績優秀者が招待される「決勝大会」での成績がおもな選考材料となるため、全国的にとりわけ優秀な学力を有する生徒のみに開かれた制度と言えるでしょう。   学費支援を受けられる大学も、ハーバード大学、プリンストン大学、イェール大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア工科大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学と8つのエリート校に限られています。   給付金額の規模(年額9.5万ドル)も今回紹介する候補のなかでトップクラスですが、一般向けとはいえない奨学金制度です。   「リクルートスカラシップ」は、理系分野を専攻する学生を対象とし、毎年発行される世界大学ランキング(QS/THE)に応じて対象校を定めている制度です。   2025年度は現地通貨ベースの支給額が設定され、円安リスクを回避できる仕様に変更されました。   こうした大学ランキングは、決して難易度順に選出されるシステムではありませんが、応募要件にTOEFL iBT100点以上などハイレベルな水準が求められることから、必然的に応募者を選ぶ奨学金制度と判断できます。   貸与型奨学金としてのイメージも強い「JASSO奨学金」ですが、JASSOでは3つの給付型の海外留学支援制度を用意しています。   ここで紹介するのは、そのうちのひとつ「JASSO海外留学支援制度(学部学位取得型)」。   所得制限もクリアしなければなりませんが、基準が家計所得2000万円以下のため、問題なく応募できるケースがほとんどでしょう。   また、英国教育でおもに設置されている大学入学準備コース(ファウンデーションコース)も支給対象に含むのは好印象です。   JASSOの公式サイトでは、2023年度学部学位取得型の選考結果が開示されています。ここで、最新の奨学生採用状況を整理しておきましょう。   表以外にも、EU諸国やアジア地域への応募も見られますが、あまりいい採用結果には結びついていないようで、むしろ、カナダや英国の大学を志望して奨学生に選ばれたケースが目立っています。   そうした状況は、北米エリアや英国の採用倍率が2倍~3倍未満にとどまっているのに対して、全体の採用倍率が3倍を超えている点からも読み取れます。   また、2022年度の採用実績はコロナ禍も関係したのかトータル45名となっており、新年度も2023年度(78名)とほぼ同水準が採用されるかは断定できません。   今回紹介した候補で、米国以外で使用できる奨学金には、国や地域が不問のJASSOと重田教育財団に加え、柳井正財団、笹川平和財団、東進、リクルートスカラシップ学術部門の4制度があげられます。   柳井財団と笹川財団は、ともに英国大学の名門校(柳井/7大学、笹川/4大学)を中心に指定し、東進に至ってはケンブリッジ大学とオクスフォード大学のみが選択肢。   英国大学といえば、ファウンデーションコースの扱いがきがかりですが、柳井正財団と笹川奨学金は同コースを経由せずに英国大学に入学するルートを支給対象としています(ファウンデーションコース対象外)。   その他の奨学金制度は、ファウンデーションコースも含めて奨学金が支給されるようですが、重田教育財団については対象か否か募集要項に記載が見あたりません。   こうして、。   今回紹介した7つの給付型奨学金は、所得制限の有無がそれぞれ異なりますが、相対評価になりそうな重田教育財団を除けば、家計状況の審査がそこまで厳しくないケース(概して2000万円以下や2700万円以下が基準)が大部分でしょう。   トップクラスの大学志望、かつなるべく高額な支給額を希望する場合は柳井正財団や笹川平和財団、さらにエン人材教育財団がおすすめの選択肢です。   とくに、笹川奨学金は2025年度より支給の上限設定がなくなり、原則として全額支給に切り替わっています。昨今は円安や物価高が続いているため、留学生にとって非常にありがたい変更点ですね。   制度自体が始まって間もないエン人材教育財団の奨学金も、原則として支給額の上限なしを掲げています。   採用枠と対象校の多さでは、柳井正財団の奨学金がもっとも充実しています。   笹川奨学金も似た傾向にあるものの、2025年度の募集は採用枠が5名程度少なくなるようです。   難関校志望ではない、知名度を問わず自分に合う留学先を選びたいという場合は、他の制度とくらべて制約事項も少ないJASSOの奨学金が最適です。