「両目は失明」「顔の大半を失う」ことに…賠償額は3億円超え、人気チンパンジーに12分間襲われ続けた『悲劇の女性』のその後(海外・平成21年)
〈 「彼女を…食べ始めた…」襲われた女性は“顔のほとんどを失う”事態に…『人気チンパンジー女性襲撃事件』はなぜ起きた?(海外・平成21年) 〉から続く
チンパンジーに襲われた女性は、両手、鼻、両目、唇、顔の中心骨格を失い、重要な脳組織にも傷を受ける事態に…。2009年に起きた「人気チンパンジー、トラビス事件」。その後、被害者の女性はどんな人生を生きたのか? 実際に起きた事件などを題材とした映画の元ネタを解説する文庫新刊『 映画になった恐怖の実話Ⅲ 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする(全2回の2回目/ 最初 から読む)
2009年、友人の飼うチンパンジーに襲われたナッシュさん ©getty
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警察が到着したとき、トラビスはパトカーに歩み寄り、ロックのかかった補助席のドアを開けようとし、激しくサイドミラーを強打した。ドアが開かないとわかるや、今度はゆっくりと運転席側に回りドアを開けようとする。異常なまでの興奮状態に、警官はやむなく銃弾を数発発射。被弾したトラビスは家に引き返し、自分の檻のそばで息絶えた。
事件現場は惨憺たるものだった。トラビスの毛と埃が舞った室内には、床にまるで挽肉器にかけられたようなナッシュの指が散乱し、彼女の上顎と鼻は掻きむしられ、顔面にはトラビスの抜けた歯が食い込んでいた。後の報告によれば、ナッシュはこの攻撃により、両手、鼻、両目、唇、顔の中心骨格を失い、重要な脳組織にも傷を受けていたという。その状態を見た医師は驚愕し、病院側は彼らの心的外傷を考慮し、専門のカウンセリングを受けることを勧めざるを得なかったほどだったそうだ。